中小企業のAI活用 第10章 UI(ユーザーインターフェイス)の必要性

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こんにちは、IT経営コンサルタントの坂田岳史です。

今回は、AIを利用する為に必要なUI(ユーザーインターフェース)についてお話しします。その前に、従来のITの使い方を確認したいと思います。

1.従来のシステムの場合
 よくエクセル台帳という言葉を聞きますが、これはエクセルで受注台帳や顧客台帳を作る例です。エクセル程度なら、それほど難しくないので小規模な会社ではよく使われています。ただ、エクセルはデータベースではないので、受注や顧客の検索などは得意ではありません。その場合、MS-Accessやフィアルメーカーなどで小規模な受注管理システムなどを作る事があります。これは、ITベンダーに開発委託しなくても、少し勉強すれば社内で作る事もできます。一方、会社の規模が大きくなると扱う情報量も多くなるので、販売管理のパッケージや独自開発で作る事になります。
 このように従来のIT(業務システム等)は、会社の規模に応じて使い分ける事ができます。では、AIはどうでしょうか?

2.AIを使う場合
 AIは、IBM-Watsonやpyhon等を使えば、音声認識や文書検索な、エクセルやAccessのように自社で作る事もできます。ただ、この場合、自分でプログラムや専用のAPI(注1)を使う必要があります。この時、注意する事は、これらの方法でAIを使うとデータの入出力が複雑になるのです。
例えば、電車の切符を自動販売機で買う時は、お金を入れて行き先のボタンを押せば切符が出てきます。これは、お金の投入口と行き先のボタンが入力で、切符が出力になっており、誰でも簡単に使う事ができます。これは、エクセルに受注金額を入力すると、自動的に合計金額を計算(出力)してくれることに似ています。一方、IBM-Watsonやpyhonを例えると、まず行先までの運賃を自分で調べます。そして自動販売機のドアを開けて、機械に直接お金を入れます。すると切符が出てくるのですが、何も印刷されていない白紙なので、自分で行き先を記入します。こんな面倒な自動販売機は、誰も使いませんよね。
 現在利用できる、無料のCognitive Servicesやpyhonを使ったAI利用は、このような不便な自動販売機に似ています。メーカーが自動販売機の動作確認をするなら、このような使い方でもいいですが、一般市民では使い物になりませね。

3.UIの必要性
 そこで、登場するのがUI(ユーザーインターフェース)と言うものなのです。これは、コンピュータシステムに簡単にデータを入力する、或いは見やすい形で出力する為のものです。Cognitive ServicesやpyhonでのAI利用は、AIの動作を確認用や学習用として使うのは非常にいいのですが、実際に中小企業の業務で使う為には、UIが必要になるのです。

4.UIの作り方
 ではUIはどのように作ればいいでしょうか?エクセルでもVBA(Visual Basic for Applications)というプログラム言語を使えば、受注金額を直接セルに入力しなくても簡単に入力する事ができます。しかし、これにはプログラミングのスキルが必要になります。
これは従来の販売管理や生産管理システムと同じく、UIが予め作られているパッケージやスクラッチ(独自開発)で、自社独自の入出力画面を開発する事と同じです。つまり、AIを業務に活用する為には、ITベンダーにUIを含むAIシステムの開発を委託する必要があります。本blogのトップにある図表は、中小製造業向けに作られた不良予測を行う、AIシステムの入出力画面と帳票です。ここでは、不良品予測画面と不良品リストがあります。前者はAIに不良予測のデータを入力するもので、後者はAIが出力した不良になる可能性がある案件一覧リストです。実際にAIを活用する場合、このようなUIが必要になります。
Cognitive ServicesやpyhonでのAI利用は、AIを体験する事や、AIの学習をするには非常に良いですが、実際に企業の業務で活用する時は、UIをしっかり設計して使い易いシステムを作る必要があるのです。

(注1)API(Application Programming Interface)
 AIに限らずソフトウェアにデータを渡す仕組みの事。例えば、みどりの窓口で新幹線の切符と買う時、駅員さんに「のぞみ150号の指定席を京都から東京まで1枚お願いします」と言います。この時駅員さんに伝える情報は、「①希望の列車(のぞみの150号)」、「②どこからどこまで(京都から東京まで)」、「③席種類(指定席)」、「④枚数(1枚)」ですね。
この4つの情報を伝えないと切符は買えませんので、これが切符を買う時の仕組みになります。AIシステムでは、音声認識をする場合、音声ファイルの形式やファイルの場所などをAPIで指定します。このようなIBM-WatsonなどのCognitive Servicesでは、予めAPIが準備されていて、これを使えば音声認識などが簡単にできるのです。ただし、業務で使う時は使い易いUIが必要になりますが。

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